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レビュー: こだま和文『Requiem DUB』

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MUTE BEATに強い影響を受けたにもかかわらずこだま和文氏のよいリスナーではなく、ベスト盤の『1982/2002』くらいしか手元になったのですが、何気なく目にした「こだま和文インタビュー:静かなるダブの自由〈後編〉」で氏が本作からトラック作成をヤマハQYシリーズを使って一人で行っているとの記述を見つけ、俄然興味を惹かれて購入しました。

https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A013744/VICL-60467.html

収録曲数10曲のうちミックス違いが6曲、しかもミックス違いは原則順に並んでいるので、アルバムというよりは12インチシングルのコンピレーションという感じ。どの曲もテンポが遅く(60BPMに68BPMなど)、サウンドもメランコリックでアルバムタイトルの示す鎮魂を強く感じさせます。万人受けするとは言いかねますが、このような作品を作らなければならなかった必然性がこのアルバムにはこだま氏のトランペットのエモーションとともにたしかに響いています。

その響きにQYがどのように影響しているかと言えば、先述のインタビューでインタビュアーが「そうとは思えない音なんですよね」と発言しているとおりで、何の注釈もなければ気づかない人も多いのではないかと思います。言われてみればチープに聞こえる音色もなくはないというくらい。QYのサウンドが実はもともと十分聴くに堪える、優れたエンジニアリングなど理由はいくつか考えられますが、ダブミックスという原音加工手法との相性のよさも指摘できるでしょう。ヒップホップやハウスと同様、ダブもまた録音を元にあらたなサウンドを生み出すことからはじまった手法であることを考えれば、「そうとは思えない」のはある意味当然なのです。

最近はKODAMA AND THE DUB STATION BANDで精力的に活動されるこだま和文氏。このアルバムからはだいぶ離れたところにおられるかと思いますが、ご自身の力を主としたパーソナルな作品もいずれ期待したいところです。

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