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西村佳哲『自分の仕事をつくる』を読む(5)付記

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先の回でひとつ引用し忘れたところがあった。

大事なのはコンセプトの精緻化より、むしろスタッフ間のコンテクスト(共有知)を育むことにある。いい仕事の現場には、その育て方が上手い人がいる。(p.53)

多くの仕事は共同作業によって成りたっているのだが、そのことを意識している人はあんがい少ない。コンピュータのソフトウェア開発なんて孤独な仕事の最たるものと思われているかもしれないが、あにはからんや、ソフトウェア開発の過程で生み出されるものはすべてコミュニケーションのメディアであるといっても過言ではないくらいだ。残念ながらそうしたメタレベルの知識が教育される機会は少ない。結果共同作業という意識もつちかいにくい。そのためコンテクストの共有が大事になる、という点についてはあまり他の仕事と変わらない。
 しかしそれはどうしたらうまく行くだろうか。書店のビジネス書の棚にでも行けばチームの形成というかたちからさまざまな方法が解説されているのを目にすることができるだろう。しかし私見ではどれも即効性や普遍性のあるものではないように思う。むしろ西村氏がはからずも口にしてしまうようにそうした作業には属人的な要素がおおきすぎるのではないか。育てる側だけでなく、育てられる側にも。
 そしてそれはそれでとりあえずいいのだと言っておくことにしたい。どんな場合でもうまく行く方法があったとしたら、その方法の対象は人ではなく操作可能な何者かに過ぎない。そのように人をみなすやりかたは売る論理の求める効率性と通底しているに違いないからだ。
 だから、コンテクストの共有方法は常に個々の現場に適したやりかたを模索することそのものが大事なのだ、そう言っておくことにしたい。
 まあ現実的にはそれで苦労することになるわけだけれども。

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