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iZotope Ozone 8 Elementsを使ってみた

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先日公開した『しるしのゆくえ』でマスタリングに使用したiZotope Ozone 8 Elements、Web上にあまり日本語の情報がないようなのでレビューを簡単に。

このOzone 8 Elements、名称からはOzone 7 Elementsのバージョンアップ版に思えますが、Elementsの機能制限のしかたが7と8でだいぶ変わっているため、かなり違ったものになっています。Ozone 7 Elementsの売りは豊富なプリセットで、ユーザーにできることはプリセットの選択とEQおよびダイナミクスの適用量調整のみ。一方Ozone 8 ElementsではOzone 7 Elementsにあったプリセットのうち著名マスタリング・エンジニアの手になるSignature Presetsがばっさりカットされ、替わりに各エフェクターが普通に編集できるようになっています。エフェクターも、Ozone 7 ElementsではEQとダイナミクス(マキシマイザー)の二種類でしたが、Ozone 8 Elementsではイメージャーも利用できるようになっています(イメージャーはOzone Imagerとして単独で利用できるようになっています。なんとフリー)。

Signature Presetsに替わるOzone 8 Elementsの売りがマスター・アシスタント機能。廉価グレードの製品からは真っ先に省略されそうな機能ですが、エフェクター数が各グレードで異なるためかElementsでも利用可能になってます(もちろん適用結果は異なるのでしょう)。ただし任意のソースをリファレンスにする機能はありません。
 マスター・アシスタント機能は簡単に利用できます。UIの"Masster Assistant"を選択、ターゲットがストリーミングかCDかを選択して(CDの場合は強度も三段階から選択)、いちばんおおきい音の部分を再生するだけ。あとは十数秒待てば設定が用意されます。『しるしのゆくえ』の場合はハイとローを持ち上げるEQ設定になりました。オンラインマスターサービスのLANDRは全体を解析しているように見えますから、解析時間の短さは評価が分かれるところかもしれません。

Tracktion WaveformにはEQとマルチバンドコンプレッサーを搭載したMaster Mixというマスタリング用プラグインが組みこまれていて豊富なプリセットが利用できるので、マスタリングの方向性を明確にイメージできればそちらの利用でいいと思うのですが、素人はそもそも方向性自体がわからないので、マスター・アシスタント機能で示唆してもらえるOzone 8はありがたいです。またLANDRやCloudBounceといったオンラインマスタリングサービスはこまかい調整ができない上無圧縮音源出力だと費用がだいぶ割高になるので、たくさんの曲を取りあつかうのであればOzone 8 Elementsのほうが結果的に安上がりということもあるでしょう。あとは評価項目として重要なのは調整の容易さ、そしてもちろん出力そのものでしょうか。
 個人的には全部おまかせで何をどうしたのか知る手がかりのないオンラインマスタリングサービスよりはOzone 8 Elementsのほうが勉強にもなりそうで使いたい気になりました。今後の作品でうまく使っていければと思っています。

以上、iZotope Ozone 8 Elementsの簡単なレビューでした。なにかの参考になりましたら幸いです。

2017-12-28(Thu)追記: マスター・アシスタント機能、既発表曲でも試してみました。すべてストリーミングをターゲットにした結果です。

EQは、「Night after midnight」や「路上、途上」などのバンド編成だとだいたい低域と高域を持ちあげる感じになりました。もちろんそれぞれでこまかな違いはありますが、多くのプリセットのようにいろいろ出したり引っこめたりするかたちにはならず、一貫してひかえめな感じです。一方「Wasted Blue」や「密やかな欲望」のような普通のドラムキットが鳴らないものは、バスドラがないためか低域がぐっと持ちあげられます(もともとあまり鳴っていない帯域なのであまり影響はありません)。また低域重視でミックスした「仰ぐ。」は中域が持ちあげられて高域が下がりました。全体的にフラットにする方向で調整を行うといってよさそうな感じです。

マキシマイザーは、ストリーミングをターゲットにするとシーリング(最大レベル)を-1.0dBに固定するようで、それに対しスレッショルド(iZotopeは「スレッシュホルド」と表記しますね)は時にシーリングを上回ったりして、傾向はよくわかりませんでした。キャラクターやステレオ・インディペンデンス等のパラメーターのほうが影響がおおきいのかもしれません。

イメージャーが有効になったものはありませんでした。

肝心の音の変化ですが、帯域の変化はもちろん、全般的にディテールの明瞭化も感じられました。ただ"Emotions Layering"などはアタックが強調されすぎてかえって聴きづらくなったりもしました。たいていはマスター・アシスタント機能にまかせるだけでも有用(もちろんその後の手動による追いこみも可能)だが、不適なケースもあるので最終的には自分の耳で判断、ということになりそうです。あたりまえの結論ですが。

なおOzone 8 ElementsはCPU負荷とは別のかたちで負荷がかかるようで、再生時にたまに音切れのようなノイズが入ることがありました。ホストするDAWによるかもしれませんが、いちおう記しておきます。

2018-02-24(Sat)追記: Ozone 8 Elementsを全面的に適用したアルバムイメージ"Snapshot"を公開しました(紹介エントリ)。YouTubeにアップロードしているものは未適用、bandcampのあるものは("Emotions Layering"を除き)適用なので、比較の参考になるかもしれません(ピークレベルが異なるので聴きくらべというわけにはいきませんが)。

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