気まぐれメモランダム / でたらめフィードバック

レビュー: 久保田・畠中編『メディア・アート原論』

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収められている「短いコードを擁護する」という文章やライブ・コーディングに触れていることなどから手に取ってみたのですが。

http://filmart.co.jp/books/nextcreator/media_art/

読者が前提知識を共有していること前提の注釈の一切ないすごく不親切な作りの本で、門外漢の私には最初はわからないことばかり。幸い続けて読んだ『マテリアル・セオリーズ』に重なる話題が多く再読していくらか見通しが開けましたが、それでもすっきりと腑に落ちたわけではありません。二百ページ強というボリュームの制約もあったかとは思いますが、注釈を充実させてもっと開かれた本にしてほしかったところです。哲学からフリー・インプロビゼーション、クリエイティブ・コーディングまで思索の対象は広範な領域にわたりそれぞれについて興味深い論点を示唆しているのですから、アプローチの手がかりはいくらあっても多すぎることはないと思うのですが。

「実利主義のコーディング」(p.175)にひたすら従事する職業プログラマとしては、実用面以外の箇所に多様な価値を見出そうとする「短いコードを擁護する」の後半は頭を柔軟にする役にたちました。バルトの「コードなきメッセージである」の読み替えはちょっといただけませんけど。なおこの引用の出典として『映像の修辞学』が挙げられていますが、同書は日本オリジナル編集の書籍のタイトルなので論文のタイトル「写真のメッセージ」を挙げたほうがよかったのでは? まあ一事が万事この調子、ということで。

(文中敬称略)

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